NECK

NECK (講談社文庫)

NECK (講談社文庫)


今回もネタバレがあるかも知れないです。

真夏のMAIJO祭りというわけで、「獣の樹」に続いて「NECK」を
読みました。書き下ろし小説、舞台版「NECK」の原作、後味の悪い
「NECK」、そして映画版「NECK」の原案という、4つの物語を
収録しています。580ページ。一見分厚いけどするっと読める。

書き下ろし小説以外は視覚化・映像化を念頭に置いて作られているため、
物語は小説という形式ではなくト書き形式(舞台原作は絵コンテも)で
進められていきます。冒頭に提示される登場人物の名前をまず頭に入れて
読み進めないといけないので始めはちょっと戸惑いますが、慣れてくると
アニメや映画を見る感じで、ストーリーが頭にするすると入ってきます。
小説を読んでいる時と、ト書きを目で追っている時の感覚は少し違うので
新鮮ではあるけど、あまり「読書!」という感じではないのは確か。

収録されている4作品とも、「NECK」という題名から分かる通り
首にまつわる物語なのですが、舞城作品には珍しくホラーテイストであり、
夜中から未明に読んでいたせいというのもあって多少ブルっとしました。

幼い頃、怖い夢の中では「こうなったら嫌だなー」と思うことがどんどん
起こって、自分の想像力に追い越されるような感覚がありました。最近は
大人になったからか、なかなかそう怖い夢も見なくなったのですが、映画
原案の物語を読んで久しぶりにあの感じを思い出すことになったというか。

それにしても絵コンテまで描けるのはすごい。物語を視覚的に作るのは
どの作家さんでも出来るのでしょうけれど、それを実際に絵の流れとして
表現できる「小説家」は少ないと思います。小説家の領域はせいぜい脚本
までで、絵コンテは監督とか演出家の領域だと思っていたので驚きました。

今作「NECK」は、「獣の樹」や他の作品のように、読者に何かを訴え
かける作品ではあまりないような印象を受けました。とにかく「え、これ、
次どうなるの?」を喚起させる作りで、どれだけハラハラさせられるか、
想像力を掻き立てられるかが、物語そのものの牽引力になっている。
ホラー映画の醍醐味は何も考えず見てるだけで「怖っ」と思えることで、
この「NECK」も、そういう面白さを追求した作品なのかなと思います。